骨・軟部腫瘍(こつなんぶしゅよう)」はあまり聞き慣れない言葉ですが、骨(ほね)にできた腫瘍と骨よりやわらかい軟部組織(おもに筋肉、脂肪組織、皮下、結合組織、末梢神経など)にできた腫瘍です。足の先から頭まで、体のどの部分からも発生する可能性があり、小児~高齢者まで幅広い年齢層に発生します。その中でも当院では整形外科領域、主に上肢・下肢(肩~指先・もも~足先)に発生する「骨・軟部腫瘍」を主に担当しています。

「骨・軟部腫瘍」はさらに良性・悪性に分かれます。良性腫瘍も多くの種類がありますが、比較的多いものとしては骨軟骨腫や内軟骨腫、脂肪腫・線維腫・神経鞘腫などがあります。悪性腫瘍は「骨・軟部肉腫」ともいわれ、骨肉腫、軟骨肉腫、脂肪肉腫、悪性線維性組織球腫、滑膜肉腫、平滑筋肉腫、神経肉腫など良性腫瘍同様多くの種類があります。

本邦の軟部腫瘍発生頻度(2006-2010年)

総数:14,797例

脂肪腫2,823
脂肪肉腫1,867
神経鞘腫1,635
悪性線維性組織球腫1,146
血管腫964
腱滑膜巨細胞腫598
平滑筋肉腫391
デスモイド型線維腫症334
滑膜肉腫292
粘液線維肉腫284
線維腫275
悪性末梢神経鞘腫瘍242
神経線維腫140
弾性線維腫130
横紋筋肉腫126
粘液腫126
結節性筋膜炎122
骨外性Ewing肉腫‐PNET115
隆起性皮膚線維肉腫101
線維肉腫100
平滑筋腫100

※赤字は悪性腫瘍を示す

診断のすすめ方

一般的な診断の進め方は以下の通りです。悪性腫瘍の可能性がある場合には、組織検査(顕微鏡検査)が必要となります。

骨・軟部腫瘍の標準的治療としては手術です。しかし、良性腫瘍の場合では、患者様が美容面や機能面の問題や痛み・しびれなどの症状がなければ定期的に大きさなどを見るだけでもよいものもあります。

脂肪腫(良性)

軟部腫瘍(悪性)

軟部腫瘍(悪性)

最後に

骨・軟部腫瘍の約9割は良性腫瘍です。しかし、その中にわずかに隠れている悪性腫瘍を確実に診断することは高い専門性を必要とします。悪性骨・軟部腫瘍の患者登録数は全国で年間約2300名程度と非常にまれな疾患ですが、決して無視することは許されない病気であり、【最初に正しい診断を行うことが重要】とされています。これまで約2500名の骨・軟部腫瘍患者様の診療に携わってきた経験を活かし、今後も骨・軟部腫瘍の診療に尽力したいと考えております。継続する腫れやしこりがあれば、ぜひ受診や検査を受けることをお勧めします。

手術は真田整形外科リハビリ科にて行われます。